
「生活保護法改正修正案」の採決に対する抗議声明
2013年6月4日、医療生協さいたま・埼玉県民主医療機関連合会は、「生活保護法改正修正案」の採決に対する抗議声明を発表しました。※2013年5月23日に行なわれた「生活保護生活実態調査結果」についての記者会見はこちら
【声明】
「生活保護法改正修正案」の採決に断固抗議し、参議院での廃案を求めます。
2013年6月4日
医療生協さいたま生活協同組合 理事長 神谷 稔
埼玉県民主医療機関連合会 会長 山田 昌樹
本日、衆議院本会議において「生活保護改正法案」の修正案が採択され、参議院へ送付されました。私たちは、この法案が(1)申請に書面提出を義務付けるなど違法な水際作戦を合法化すること、(2)親族の扶養を事実上生活保護申請の要件とすることから、国民の申請権を奪い、格差と貧困を拡大し、孤立死、餓死を広げることになる、として廃案を求めてきました。
2日間の審議で、厚生労働大臣は「いずれの場合も現行の取り扱いを変更することはない」との説明を繰り返してきましたが、そうであればこの法律をそもそも改正する必要がありません。法文が変更されれば、この厚生労働大臣の説明が通用しないことは多くの専門家により指摘されており信頼できません。
国民の危惧の声におされ、5月29日に民主党、自民党、公明党、維新、みんなの党の5党は、上記(1)の点について「特別の事情があるときは、この限りではない」とする修正案を提出し、採択へ強行しました。しかし、申請のハードルが下がったわけではありません。
しかも(2)の点については、委員会の質疑、参考人の発言でも繰り返し問題として指摘されながら、修正されませんでした。
この法案の審議中、大阪市においてDV被害から逃れて暮らしていた28才のお母さんと3才の子どもが餓死するという痛ましい事件が起きました。電気、ガスは止められ、口座残高は数十円、「最後におなかいっぱい食べさせられなくてごめんね」とお母さんの走り書きのメモが残されていたといいます。こうしたDV被害者が生活保護を申請した際に、DV加害者であり扶養義務者である夫に対して通知や調査がなされるとすれば、居場所を知られることを危惧して申請をためらうことは容易に想像できることです。親族の扶養義務を強化することは絶対に行ってはなりません。
後発医薬品の事実上の義務付け、被保護者の生活上の責務、保護金品からの不正受給徴収金の徴収など他にも重大な改悪内容があり、「修正案」でも変更されていません。現行の生活保護法のもとでも十分に法の主旨が活かされていないため、日本の生活保護利用率は先進諸外国とくらべると極めて低い数字にとどまっています。
社会保障の土台となる「生活保護法」が、こうした問題点を十分に審議・検証することなく「改正」されて良いはずがありません。今回の「生活保護改正案」は廃案とするしかありません。
私たちは、よりいっそう運動を強め、参議院での廃案に全力をあげることを表明します。
以上