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健康コラム

(12)うつ病 ストレス社会で増加中

「けんこうと平和」2010年7月号掲載

何もする気が起きない、眠れない…もしやうつ病では?と心配している方も多いのではないでしょうか?
うつ病患者が増えている昨今、本人も周囲も病気について正しい知識をもって治療にあたりましょう。

荻野(おぎの) マリエ

【監修者のことば】
埼玉協同病院精神科 医師 荻野(おぎの) マリエ

うつ病も他の疾患同様、早期治療が大切です。自己判断せず、適切な環境で治療を受けてほしいと思います。
不安なときは、まずかかりつけ医に相談しましょう。

心のエネルギーが不足した状態

日本人の15人に1人が人生のどこかでうつ病を経験するといわれています。患者数は女性のほうが多く、出産・育児や更年期などで、気分が落ち込みやすい時期が多いからと考えられます。最近は、男女を問わず30代の働きざかりにうつ病が増え、長期休職などの問題が広がっています。

だれにでも気分が落ち込んだり、集中力や意欲が低下することはあります。うつ病の場合は、そういった状態が長く続き、新聞やテレビを見ても頭に入らない、興味があることにも楽しくとりくめない、いつもできることができないなど、日常生活や仕事に支障をきたすようになります。

人間が活動するためには、体のエネルギーだけでなく、心のエネルギーも必要です(右下図参照)。一時的にこれが不足した状態がうつ病です。食欲がない、眠れない、疲れやすい、頭痛や便秘が続くなど、身体的な症状が出やすいのもうつ病の特徴です。

うつ病になる可能性はだれにでもある

脳の中には、約1千億個の神経細胞があります。神経細胞から神経細胞へと情報を伝えるのが神経伝達物質で、この働きが悪くなると、情報処理がうまくいかなくなり、脳の働き全体が低下します。そのため、意欲がなくなったり、情緒が不安定になるというのが、うつ病のしくみで、だれにでも起こる可能性があります。

確実な予防法があるわけではありませんが、規則正しい生活をし、休息も適度にとって過労を避けていれば、ストレスにも強くなるでしょう。日ごろから体の調子を整えておくことが大切です。また、頭痛、肩こり、疲れなど、体からのSOSを自覚しているのに無理をすると、うつ病になりやすいといえます。

病気を受け入れて適切な治療を

うつ病は治すことができる病気です。病気ですから、いつも通りの生活をしながら、ほうっておいても治る、というわけではありません。「うつ病は心の風邪」といわれることがありますが、それほど軽いものではなく、「心の骨折」と考えたほうが、理解しやすいでしょう。脚を骨折したときは、病院へ行って、ギブスでかためるなどの処置をして治します。入院することもあります。うつ病も、本人が病気であることを受け入れて、適切な治療を続けることが必要です。

うつ病の治療の基本は、よく休むことです。症状が軽ければ、休息のみで回復する場合もあります。仕事が忙しい、家族の世話をしなければいけないなど、理由はともかく休まずにいると、さらにうつ病を悪化させることになります。どうしても生活を変えることができない場合は、入院してうつ病の原因になっている環境から離れることも必要です。

最初の3カ月はとにかく安静に

つらい症状を取るために、最初の間は、寝て、食べて、排泄するだけで十分と考えてください。自然に動けるようになる時期がくれば、医師から散歩などを勧められることもあります。

うつ病の治療で使用する薬は、神経伝達物質の正常な働きを助ける薬です。最初は少なめの量で様子を見ながら使いはじめます。そのため、効果が出るまで1カ月ぐらいかかることもあります。

治療をすれば、うつ病はどんどんよくなるわけではありません。いい状態と悪い状態をいったりきたりしながら、少しずつよくなっていきます。落ち着いたと思っても、無理をするとまた逆戻りということもあります。再発予防のためにも、薬は、症状が改善しても1年ぐらいは続けます。

ストレス社会で増加中
うつ病と心のエネルギーの関係
うつ病と心のエネルギーの関係
うつ病・うつ状態になるきっかけ
うつ病・うつ状態になるきっかけ
最悪のケースを避けるために

身近にうつ病の方がいるときは、患者が十分休めるように協力しましょう。励ますのはかえって負担になります。気分転換になっていいのではないかと、何かに誘ったりすることも不要です。うつ病では、人に会うことも大きなストレスになります。本人が自然にその気持ちになるまで待ちましょう。

同じような環境にいても、病気になる人もならない人もいます。個人差が大きい病気なので、人によって症状はいろいろです。自分の基準で考えずに、あたたかく見守るようにしましょう。

本人が病気に気づいていない場合もあります。会社であれば、家族や上司、産業医などに相談し、無理をさせずにはやく受診できるように協力しましょう。そのままにしておくと、自殺という最悪の事態につながることもあります。うつ病になると、「周りに迷惑をかけている。死んでおわびをしたい」と思いこみ、自殺を考えてしまうことが多いのです。治療をして症状がよくなってきたときのほうが、体が動くようになり、自殺の実行の可能性が高くなります。よくなってきたと安心せず、家族は引き続き注意することが必要です。

体の病気が隠れていることも

うつ病ではなくても、うつ状態になる病気もあります。たとえば、脳卒中などの体の問題が影に隠れていて精神的に不安定になっている場合です。高齢の方で、気づかないうちに小さい脳梗塞を起こしていて、うつ状態になっていることもあります。また、うつ病ではなく認知症の場合もあります(認知症だと思っていたがうつ病だったというケースもあります)。

その他、甲状腺の病気や、肝炎の治療薬であるインターフェロン、血圧を下げるベータブロッカーなどの薬剤が原因でうつ状態になることもあります。


うつ病の症状

【基本的な症状】

  • □ 悲しい、気分が憂うつ。
  • □ 何事にも興味を感じない。
  • □ 意欲がわかない。

【その他の症状】

  • □ 疲れやすい。
  • □ 集中力がない。
  • □ 思考力がなく、決断できない。
  • □ 食欲がない(体重が急に落ちる)。
  • □ 眠れない(なかなか寝つけない。朝早く目が覚める)。
  • □ 人に会いたくない。
  • □ 自分には能力、価値がなく、周囲に迷惑をかけていると思う。
  • □ 死にたいと思う。

上記の項目がいくつあればうつ病というわけではありません。こうした症状が日常生活や仕事に支障をきたすかどうかが、診断の鍵になります。

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