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「けんこうと平和」2008年2月号掲載
血圧や血糖値とともに、血液中の脂質も、
動脈硬化につながる生活習慣病の一因です。
日本人では男性は30代から、
女性は50代から、2人に1人がこの数値に問題があるといわれています。
埼玉西協同病院 院長 福庭 勲(ふくば いさお)
食べ過ぎと運動不足のほか、タバコも血管を収縮させ、血液の粘度を高めます。
一度硬くなった血管は、ほとんどの場合、元には戻りませので、
若いうちから生活習慣には気をつけましょう。
こんな人は検査を
血中脂質が適正量でなくても自覚症状はありません。検査で見つけることしかできないので、この1年間に健康診断を受けておらず、次のいずれかに当てはまる人は、検査を受けてコレステロール値や中性脂肪値を確認するといいでしょう。
- □太っている
- □たばこを吸う
- □高血圧
- □ストレスが多い
- □女性で閉経している
体に必要な脂質も多すぎると問題
どんなに健康な人でも、血液の中には必ずコレステロールや中性脂肪(トリグリセリド)といった脂質(脂肪分)が含まれています。脂質は体になくてはならないもので、コレステロールは体の細胞膜を作るのに欠かせず、ビタミンA・D・Eや、体に入った菌と戦うステロイドホルモンの原料になります。また、中性脂肪は余ったエネルギーを必要なときに使えるように蓄えたもので、体温を一定に保ち、体を動かすエネルギー源となります。
ところがこうした脂質も、LDLコレステロール(悪玉コレステロールと呼ばれている)や中性脂肪が必要以上に多かったり、HDLコレステロール(善玉コレステロールと呼ばれている)が少なかったりすると、「脂質異常症」といって、注意が必要です。「脂質異常症」は聞き慣れないことばかもしれませんが、以前から「高脂血症」の名前で知られています。脂質の中でも、HDLコレステロールは基準値よりも少ないほうが問題であるということで、昨年、日本動脈硬化学会が、高脂血症の呼称を脂質異常症と置き換える方針を出しました。学会の新しいガイドラインでは、総コレステロールの数値よりもLDLコレステロール、 HDLコレステロールの数値を重視するように改定しています。
コレステロールの悪玉と善玉って何?
脂質異常症は、初期の段階では特に自覚症状はありません。しかし、放置しておけば確実に動脈硬化を早め、脳卒中や心臓病など、命にかかわる病気を引き起こす可能性が高いのです。
では、コレステロールや中性脂肪によって、どのように動脈硬化が進むのでしょうか。
脂質は血中では、たんぱく質の皮で覆われたリポたんぱくという物質になって存在します。血液の中でLDLコレステロールが多すぎると、使われない分は血管壁に付着します。それを掃除しようと、体の防御作用が反応して、肥満細胞が集まってきます。肥満細胞はLDLコレステロールを食べてくれますが、立ち去らずにその場で死んでしまいます。その結果、血管壁には肥満細胞ごと、コレステロールを含んだアテロームというどろっとしたかたまりが堆積します。これが血管をふさいだり、圧力が高まるとはじけて、中の脂質をあふれさせ、血管をつまらせたりするのです。
逆にHDLコレステロールは、血管壁から、たまったLDLコレステロールを引きはがし、肝臓に戻す働きをします。脂質ということでは同じですが、こうした働きの違いから、HDLを善玉、LDLを悪玉というわけです。ただ、HDLコレステロールはLDLコレステロールと比べると処理能力が低いので、コレステロールを含む食品をたくさんとれば、その働きは追いつくことが難しくなります。
中性脂肪は、それ自体は直接動脈硬化の原因とはなりません。しかし、中性脂肪が増えるとHDLコレステロールが減り、LDLコレステロールが増えやすくなるので、間接的に動脈硬化を進めることになります。
子どもの脂質異常症はアメリカ人並み?
脂質異常症は、遺伝や病気によっても起こりますが、約8割は食生活に原因があるといわれています。脂肪の摂取量が多い欧米型の食生活になったことで、日本人にもLDLコレステロールや中性脂肪の値が高い人が増えてきました。
特に問題になるのが、ハンバーガーショップのようなファーストフード店を手軽に利用するようになった子どもたちです。子どもだけで見ると、脂質異常症の占める割合は、肥満大国アメリカに追いつく勢いです。このままいけば、将来、日本の脂質異常症人口がさらに増えるのは確実です。
家庭の食事に気をつけるのと同時に、子どもたちが外食や買い食いで誤った食習慣を身につけないよう、食生活について家族で話し合う機会をもちたいですね。子どもたちがよく飲んでいる清涼飲料水や炭酸飲料水にも、500mlのボトル1本で角砂糖約10個分の糖分が含まれるものも多く、中性脂肪を増やす原因になっています。
無理のない計画で生活習慣の改善を
脂質異常症を予防するには、他の生活習慣病同様、栄養バランスのとれた適量の食事と、よく体を動かすことが大切です。高血圧、高血糖、肥満をともなったり、心筋梗塞や脳梗塞を起こしたことがある場合はLDLコレステロールの目標値は通常よりもさらに低く抑えなければならなくなり、食事制限も厳しいものになります。
しかし標準体重で、LDLコレステロールや中性脂肪値が基準値内にあり、HDLコレステロールも基準値を超えていれば、そんなに神経質になる必要はないでしょう。脂質異常症で気をつけるべき食生活のポイントを表にまとめたので、現在の食事を見直す参考にしてください。生活習慣改善には、完璧な食生活を続けようとするより、無理せず長続きできる方法でとりくむほうが、効果的です。
肉類よりも魚の脂肪や植物性脂肪がよいのは、HDLコレステロールを増やしてLDLコレステロールを減らす効果があるからです。ただし、動物性脂肪をまったくとってはいけないということではなく、また悪玉コレステロールを減らすといわれる植物油も、とりすぎれば善玉コレステロールを減らす原因となるので、要はバランスです。揚げ物は、育ちざかりの子どものいる家庭でも、週に1~2回にとどめたほうが望ましいでしょう。
また、LDLコレステロールは酸化することでより血中にたまりやすくなるので、それを防ぐため、ビタミンEやAを多く含んだ緑黄色野菜をしっかり摂ることも重要です。
最後に、寒い季節ですが、ウオーキングなどの運動習慣もがんばって続けてください。
脂質異常症の診断基準(空腹時採血)
(日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年度版」から)
- LDLコレステロール 140mg/dl以上
- HDLコレステロール 40mg/dl未満
- 中性脂肪 150mg/dl以上
LDLコレステロールの求め方
メタボリック症候群の診断基準には、LDLコレステロールの基準値は入っていないので、4月からの特定健康診断の結果には、LDLコレステロール値が示されない場合もあります。そんなときは、次の式で計算します。

※中性脂肪が400mg/dl以上の人は計算式では算出できないので、医師に相談してください。
3つの「あ」に気をつけよう!
- 1.あまいもの
- 特に中性脂肪が高くなる原因です。1日の適量は50g程度。飲料水の糖分は吸収しやすいので要注意。ケーキのように糖分と油がそろうと脂肪分になりやすいという性質があります。
- 2.油
- コレステロール、中性脂肪ともに高くなります。男子で1日大さじ2杯、女性で1杯が適量。とんかつなら1枚、天ぷらなら3個、鶏のから揚げなら4個程度に大さじ1杯の油が含まれます。
- 3.アルコール
- ビールはコップ1杯で約80kcal。カロリーで見ると3杯分でごはん1杯分と同じということになりますが、体への影響は異なります。飲めば確実に中性脂肪が増えます。
生活習慣病を防ぐ食事の基本
- バランスのよい栄養
- 炭水化物・脂質・たんぱく質=6:2.5:1.5
- 適正な体重を保つ摂取エネルギー
- 身長(m)×身長(m)×22×活動量*(単位はkcal)*活動量は、25~35まで幅があります。
- 十分なビタミン、ミネラル、食物繊維
- 野菜は1日350g以上、緑黄色野菜と淡色野菜の割合は1:2を目安に。
コレステロール別食品分類
- コレステロールが多い
- 卵(魚卵も含む)、レバーなど内臓類、マヨネーズなど
- コレステロールを上げる
- ポテトチップス、チョコレート、ケーキ、インスタントラーメンなど
- コレステロールを下げる
- 豆腐、納豆、豆類、野菜、海藻、青ざかな(いわし、さば、さんまなど)など
