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「けんこうと平和」2011年12月号掲載


【監修者のことば】
埼玉協同病院 健康増進センター長 小池 昭夫(こいけ あきお)
日本はお酒に寛大な国で、だれでもいつでも簡単に買うことができます。「百薬の長」も飲み方を誤れば「毒」。飲む機会が多くなる季節ですが、上手にお酒とつきあってください。人に飲ませるのもほどほどに。
可能性はだれにでもある
アルコール依存症になるきっかけは、意外に身近にあります。たとえば、接待や飲み会を重ねているうちに、あるいは、いやなことをお酒でまぎらわしているうちに、だんだん飲む回数や量が増え、自分でコントロールできなくなってしまうのです。ひとりで家にいる時間が長い主婦も、例外ではありません。
寝酒も問題です。寝付きはよくても、眠りが浅くなり、途中でめざめてしまい、眠るためにまた飲むという悪循環に陥る可能性があります。宴会や会合など、機会があれば飲むという機会飲酒の人も、自分から積極的に機会を作るようになったら、アルコール依存症の入り口にさしかかっているかもしれません。
アルコールが含まれている栄養ドリンクの常用で、意識しないまま依存症になる人もいるので、気をつけましょう。
飲酒量が増えたときは危険
お酒に含まれる「アルコール」という物質は、たばこのニコチンと同じように、依存性があり、毒性もあります。心身が求めるままに飲んでいると、量がだんだん増えていき、やがていつも手の届くところにお酒がないと落ち着かなくなります。また、飲むために、理由(言い訳)を考えるようになります。
お酒がきれると、いらいらしたり、手足や全身がふるえたりという症状も出ますが、飲めば抑えられるので、さらに飲むようになります。最後には一日中飲みつづけずにはいられなくなり、命を落とすこともあります。治療法は断酒しかなく、それも一生続ける必要があります。症状がおさまったとしても、再び口にすると、またやめられなくなってしまうからです。これがアルコール依存症の怖いところです。
どこからがアルコール依存症、という線引きは難しいですが、お酒が強くなったと感じたときは要注意です。晩酌や寝酒の習慣がある人は、以前と比べて飲酒量が増えていないか、ときどきふりかえってみる必要があります。
脳から内臓まで全身に悪影響
お酒をたくさん飲むことで、最も大きな負担がかかるのは、アルコールを分解する肝臓です。アルコールの毒性が肝臓を傷つけ、アルコール性肝炎、脂肪肝、肝硬変、肝がんなどを起こす危険性があります。中性脂肪の量が増え、脂質異常症となって、動脈硬化を進める原因にもなります。多量飲酒の悪影響はほぼすべての内臓に及ぶと考えてよいでしょう。WHO(世界保健機関)は、アルコールを大腸がん、食道がん、乳がんをはじめとする60以上の病気の原因としています。
また、アルコールは脳の中で記憶をつかさどっている「海馬(かいば)」に影響を与えて、記憶力を低下させることや、全身の細胞の老化を早めることもわかっています。
お酒はカロリーが高いので、太らないように、飲むときは食べないという人もいるようですが、お酒でカロリーは補えても、栄養は補えません。
分解できるのは1時間に7g
通常アルコールが分解されるのにかかる時間は、体重60~70kgの男性で、純アルコール7gにつき1時間です。アルコールを分解する能力が低い女性では、もっと時間がかかります。朝起きて息が「酒臭い」ときは、アルコールが分解しきれていない証拠です。量を減らしたり、夜おそくまで飲むのをやめましょう。
最近は、女性の飲酒も増えていますが、妊娠中や授乳中はお酒を口にすべきではありません。赤ちゃんにとって、安全な量はないからです。慢性疾患などの治療中で夜服用する薬がある人も、飲酒は控えてください。効き目が強く出て危険な場合があります。
あなたが飲んでいる純アルコール量は?
お酒の種類ごとの純アルコール度は以下の通りです(( )内の度数の場合)。「節度ある適切な飲酒」の量は、純アルコール量にして1日男性で20g以内、女性で10g以内が目安です。ふだんどのくらい飲んでいるか、調べてみましょう。
血中のアルコール濃度の求め方
血中のアルコール濃度は、0.10%ぐらいまでが「ほろ酔い」状態(個人差があります)。この状態でもすでに理性や判断力に支障が出はじめています。これを超えると、「お酒で失敗する」危険性が大です。

例)体重50kgの人がワイン(アルコール度数12)を
1杯(120ml)飲んだ場合
120×12÷(833×50)≒0.035%
お酒で健康を害さないための注意点
- 食べながらゆっくり飲む
- 自分の適量を守る
- 強いお酒は薄めて飲む
- 週に2回は飲まない日
(休肝日)を作る - 長時間飲みつづけない
- 人と飲むときはお互いのペースを尊重する
- おそい時間に飲まない
- 薬を飲むときはお酒は飲まない
あなたのアルコール依存症度をチェックしてみましょう。
これは独立行政法人国立病院機構の久里浜アルコール症センターで開発された日本人向けのアルコール依存症スクリーニングテストです。男性版と女性版があります。最近6カ月以内に質問のようなことがあったかどうか、答えて、判定結果をご覧ください。
| 男性版 | はい | いいえ | |
|---|---|---|---|
| 1 | 食事は1曰3回、ほぼ規則的にとっている | 0点 | 1点 |
| 2 | 糖尿病、肝臓病、または心臓病と診断され、その治療を受けたことがある | 1点 | 0点 |
| 3 | 酒を飲まないと寝付けないことが多い | 1点 | 0点 |
| 4 | 二曰酔いで仕事を休んだり、大事な約束を守らなかったりしたことが時々ある | 1点 | 0点 |
| 5 | 酒をやめる必要性を感じたことがある | 1点 | 0点 |
| 6 | 酒を飲まなければいい人だとよく言われる | 1点 | 0点 |
| 7 | 家族に隠すようにして酒を飲むことがある | 1点 | 0点 |
| 8 | 酒がきれたときに、汗が出たり、手が震えたり、いらいらや不眠など苦しいことがある | 1点 | 0点 |
| 9 | 朝酒や昼酒の経験が何度かある | 1点 | 0点 |
| 10 | 飲まないほうがよい生活を送れそうだと思う | 1点 | 0点 |
| 合計 | 点 | ||
| 女性版 | はい | いいえ | |
|---|---|---|---|
| 1 | 酒を飲まないと寝付けないことが多い | 1点 | 0点 |
| 2 | 医師からアルコールを控えるようにと言われたことがある | 1点 | 0点 |
| 3 | せめて今日だけは酒を飲むまいと思っていても、つい飲んでしまうことが多い | 1点 | 0点 |
| 4 | 酒の量を減らそうとしたり、酒を止めようと試みたことがある | 1点 | 0点 |
| 5 | 飲酒しながら、仕事、家事、育児をすることがある | 1点 | 0点 |
| 6 | 私のしていた仕事をまわりの人がするようになった | 1点 | 0点 |
| 7 | 酒を飲まなければいい人だとよく言われる | 1点 | 0点 |
| 8 | 自分の飲酒についてうしろめたさを感じたことがある | 1点 | 0点 |
| 合計 | 点 | ||
判定結果
| 男性4点以上、女性3点以上 | アルコール依存症の疑い群 (アルコール依存症の疑いが高いので、専門医を受診することが必要です) |
|---|---|
| 男性3~1点、女性2~1点 | 要注意群 (飲酒量を減らしたり、一定期間禁酒をしたりする必要があるので医師と相談を。ただし男性で質問1のみが「いいえ」で1点の場合、女性で質問6のみが「はい」で1点の場合は、正常群とします) |
| 男女とも0点 | 正常群 |
